近年、『想定外』と言われる災害、地震、スーパー台風、豪雨が当たり前のように頻発しています。
『激甚災害』などという言葉が私たちの耳に当たり前のように届くようになり、河川の氾濫で流されていく家や自動車をテレビで目にするのも違和感がなくなってきています。
こんな日本で私たちはどのように生きて行けばよいのでしょうか。
どのように『トラック運送』という、災害に弱いインフラに支えられて成り立つ事業を継続するべきでしょうか。

『備えあれば憂いなし』と頭では分かっていてもなかなかその備えができないのが世の常です。
実際、当事者になってみなければ真剣にその備えに取り組めないでしょう。

しかし、トラックのハンドルを握っている皆さんの中には緊急物資輸送に携わったり、運送途中で被災地を通過したりして間接的にその現実と大変さを目の当たりにしていることでしょう。

今回の『災害時のロジスティクス』は大きな問題です。
トラック業界全体で真剣に取り組まねばならない課題です。
社員と社員の家族を守り、会社を守る、まずはそこからスタートでしょう。
そして、鉄軌道の輸送と違うフレキシブルな行動力を持つ『トラック運送』の使命として救援活動があります。
直近にあった台風19号、まだまだ大きな傷跡の残る東日本大震災などを通して『トラック運送』の災害時のロジスティクスを考えたいと思います。

トラックのタイヤと地面

台風19号で物流大手三社が取った対応

実際の災害にあって

ずいぶん前の事となりますが『阪神・淡路大震災』が起きた1995年、筆者はゼネコンの営業マンでした。
当日1995年1月17日5時46分、奈良県の自宅ベッドで地面から湧き起こってきた「ドーン」という音を聞いていました、奈良県北葛城郡でもユサユサと自宅は揺れました。
それからテレビのスイッチを入れると兵庫県を中心に大地震が起きたとアナウンサーのうわずった声が耳に入ります。
そして、「未確認である」と言いながら阪神高速道路の高架が倒壊していると言いました。
筆者は公共放送が「未確認である」なんて言わない方がいいのに、と思いながらしばらくして飛び込んできた画像をみて驚愕しました。
アナウンサーの言った通りだったのです。

そして翌日から筆者は1か月間神戸の人となりました。
職員の救援と得意先の救援活動でした。
筆者たちの仕事は届いたものを職員、得意先に届ける『小運送業』的な仕事でした。
東日本大震災と違う阪神大震災の特異性の一つは大阪とつながる主要幹線が国道43号線とその上を走る阪神高速道路しか無かったことでしょう。
神戸に続く道路は停滞して救援物資は届かず、負傷者の移送さえ、ままなりませんでした
筆者のいた会社は船舶を所有していたので大阪南港から神戸港まで救援物資のピストン輸送を行いました。
この時ほど公共インフラである道路のありがたさとそれが無ければ無力のトラック運送の力を知りました

物流大手三社の対応

まだ被害の全容のつかめない台風19号、そのスーパー台風の威力を予想し早くから休業を発表した大手配送会社、その後の休業も発表され開業のめどの立たぬ地域もあります。

『復興』、『救援活動』はこれから長く続きます。
そのためにまずは現状把握をして、身の周りを固めることです。
『城守らずして戦は出来ず』です

出来ないことを出来ないとはっきり宣言することで人間は次の方策を考えます。
『情報の一元化』にもとづき、はっきりした情報が共有できれば安心は生まれてきます。
親族や知り合いに救援物資を送ってあげたい気持ちはわかりますが、それは次の段階でしょう。

この選択は企業として正解の行動だったと思います。

高速道路の渋滞

災害時、実際に行えることを考える。(運送業として)

社員と社員の家族の安否

実際被災してしまったケースを想定して、です。
社員、社員の家族の安否確認は責任者、サブ責任者に届くよう『情報の一元化』をしなければなりません。
それから荷主様、運送先様への連絡となるでしょう。

まずは安心です。
安心があってこそドライバーは会社とお客様のためにハンドルを握れ、家族は家から送り出してくれることでしょう。

持ち場でできることの確認

ハンドルを握っていてドライバーが被災した場合、司令塔である会社が被災してしまった場合、
運送業では現場は一つではありません。
しかもドライバーはその時どんな場所を走っているかもわかりません。
情報の共有化が安心を増すとともに、危険回避にもつながります。
ドライバーの自分の目は大切です。
しかし、司令塔である事務所で多くの関連情報をつかまえて大局的に見て判断することはさらに危険の回避につながって、会社の利益損失に貢献することになります。

最終的に運送業に与えられた『救援物資輸送』という使命を果たすためには、まず自分自身の身を守ることです。

災害時の運送業の未来を考える

ロジスティクス4.0で物流の「運送」「保管」「梱包」「手配」の全てがAIによりシステム化され、そこに人間が多く関わらなくなれば災害など無縁な世界です。
しかしながら、このロジスティクス4.0での機械化ほど災害に弱いものはないでしょう。
いずれは、災害により被災した機器を修復するロボットまで現れてまったく人の手はかからないようなSF小説のような世界が待っているのでしょう。
でもそれはまだずいぶん先のことでしょう。

運送業におけるBCP(事業継続計画)の必要性を考える。 

万が一の災害に備えて、企業として事業を継続していくために準備しなければならないこと、実際起こってしまった時に何をするべきなのかを考えることが重要なことは理解いただけると思います。

このためにBCP(事業継続計画、Business continuity planningの考え方が必要になってきます。

戦後、70年以上が過ぎて数々の大きな災害に見舞われ多くの方が犠牲になってきました。
それでも人間は『対岸の火事』を決め込む事ができ、喉元を過ぎたら忘れてしまうのです。
しかし私たちはそんなわけにはいきません、トラックに積む大切な荷物を運送するという重要なミッションや、自社の従業員、ドライバーそしてその家族を守るという重責があります。
『備えあれば憂いなし』です。

次回は荷主様の立場での災害時のロジスティックスとBCP(事業継続計画)についてみなさんと一緒に考えてみたいと思います。

(筆 : 三河のジョナサン)