天気の日に走っていくトラック
ダンボールに載っているトラック
高速道路を走るトラック

物流の世界には川上にあるメーカー、荷主から流れ着く川下であるエンドユーザーの手元に物が届くまで運送業者を含めて多くの業種が存在して、その多重構造の中には各々の昔から続くしきたりや、やり方があります。
これらは江戸時代から続く陸上運送の長い歴史の中で培われたものであって、そう簡単に変えることの出来ないことでした。
しかし、鎖国という日本国のルールを変えて開国した明治時代には、すでに現在の運送業界、物流業界の変化は始まっていたに違いありません。
AIが世の中に浸透してきて運送業界においても通信手段のみならず安全や運行の安定にも役立っていくことでしょう。
システム化による情報の一元化は荷主業にとっても便利でスピードを上げる欠かせぬ手段となっています。
そして物流を取り巻く環境は強烈な勢いで変幻しており、荷主業はそれに対応していかなければなりません。

荷主であるファーストパーティーロジスティクス(1PL)の問題解決に登場したのがサードパーティーロジスティクス(3PL)です
1PLのみならず2PL(セカンドパーティー、卸問屋や小売販売店)まで巻き込んでいる3PLについて今回は考えてみたいと思います。

今の日本での物の流れ

人の手から人の手へと、人力で書や物は大切に運ばれ始めました。
江戸時代から続く『伝馬と助郷の制度』、人と馬による配送システムは、ほんの150年の間に急激な成長を遂げ、現在では『当日配達』などという言葉まで生まれています。
BtoB(Business to Business法人向け)からBtoC(Business to Customer直接消費者向け)へと物の流れも変わりつつあります。
そんな時代に移り、荷主業や卸売業が抱える物流の問題点を解決し、新しい物流の仕組みを作っていこうというのが3PL事業です

国も3PL事業を推奨しており、以下のように説明しています。
・ アウトソーシングや効率化による「物流コストの低減」が「国際競争力の強化」
・ 物流拠点の集約化、合理化による「環境負荷の軽減」が「地球環境対策」
・ 流通加工など総合的な物流拠点の立地促進により「地域経済の活性化、地域再生」
参考:3PL事業の総合支援(国土交通省)

3PLのメリットとデメリット

一番のメリットは、荷主業が各社のマーケティング戦略のもと、今までの分業を総合的に一連の業として成り立たたせことによって、入ってきた荷を保管して配送する当たり前をより効率よく行い利益を上げることでしょう。
荷主業は今までのように運送・保管・荷役の全体を見る必要が無くなり3PL事業者一点に話をすればすべてが済むというメリットもあります。
それまでその役割を果たしていた自社のセクション、担当者が不要となってコスト削減できるメリットがあります。
手間(=時間)が少なくなり、人員を足らないセクションンに補充できることは企業にとっては大きなメリットになると思います。
これらは短期間的に見た場合でのメリットとなります。

荷主からスタートして運送、保管、荷役に加えて不動産や建設業まで加わっている現在の物流業界の多重構造の複雑さをこの3PL事業が整理してしまったようにも見えます。
しかし、BtoBでもBtoCでも物は川上から川下に流れることに変わりはありません
3PL事業が物流の根本を変えることは無いでしょう。

eコマース市場の最大手、アメリカ本社の会社は最近オープンした大阪のセンターで開業から現地従業員を直傭で採用していました。(ほかのセンターは派遣従業員です。)
それが半年たったこれから荷役派遣会社から派遣従業員の受け入れに切り替えるそうです。
運輸系荷役派遣会社から従業員を派遣させることをその会社では3PLと呼んでいるとも聞きました。
全てがアメリカ方式の3PLでは不具合があるのではないでしょうか。
部分部分の採用をセンターごとで変えているのでしょう。
『郷に入らば郷に従え』でアメリカ方式そのままが日本にマッチしないことを痛感してその都度一番適合する方法を検討してやっていく。
ひょっとしてAIを動員して最適な方法を検討し続けているのではないでしょうか。
東北でも始まるデリバリーパートナーというやり方も同じことでしょう。
時代や地域に合わせて柔軟にやり方を変えていく、これを考えるのは人間であってAIではありません。
すべてお任せの3PL事業は人に深くものを考えさせず、人の成長を妨げるかも知れません。
これが3PLのデメリットでしょう。
人が成長しなければ強い会社にはなれません。

3PLの今後

これまで多業者に任せていた運送・保管・荷役の全体を1社に任せばことが足りる。
このことは荷主の物流のアウトソーシングにしか見えず、ゼネコンにいた筆者には建設業において、ゼネコンが請負い全てを協力業者に丸投げする一括下請負にも見えます。
そしてこれは建設業法では禁止されています。
『1社に任せばことが足りる』でいいのか疑問です。

国は推奨する3PL事業を定義で「国際競争力の強化」・「地球環境対策」・「地域経済の活性化、地域再生」へと、きれいな日本語でまとめていますが、これらを推し進めることは『働き方改革』に逆行しているような気がしてなりません。
この言葉の陰には重層構造のなか、しわ寄せを受けるたくさんの業者さんたちがいると思います。
ここには『働く人の幸せ』という言葉が抜けていると思います。

また、先ほどのeコマース市場の最大手の会社で最近始まった『置き配サービス』なるもの。
不在者再配達のロスを減らすために、システムを利用し受取者の指示によって自宅前の自転車のかごに入れたり、水道のメーターボックスに放り込んで配達を完了とするとのことでした。
筆者は説明を聞き違和感を覚えました。
アメリカ映画で見かけるような、新聞配達が自宅の芝生の上に投げ入れ完了とする、あのイメージは日本では難しさもあるのではないかと感じました。
今後、こんな新しいやり方にはAIも導入されて、配送地域や配送する物などのハード面ばかりではなく、日本人の性質などのソフト面も含めて再設計されていくことでしょう。
問題、課題はいつまでも無くなることは無いということです。
何にもまして大切なのはこれらの問題解決に挑み、推進する人間の柔軟なものの考え方でしょう。

そのためには人間が成長し続けなければなりません。
『自社の社員が成長する』
それが3PL事業の役割であり、今後出てくる新しい事業の役割でもなければならないと思います。

(筆 : 三河のジョナサン)

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