BCP(事業継続計画)が日本でも注目されるようになったのが2001年にアメリカで起きたあの不幸な出来事『同時多発テロ』からだという人が多いです。
それ以前からもBCPはあったのですが、『同時多発テロ』時に実際にそれを取り入れていた企業の立ち直りが早かったという実績が残っているからのようです。
筆者はちょうどこのころに転職し、ゼネコンから関西某私鉄の設計事務所に転職し営業マンとして働いていました。
BCPを初めて知り、コンサルタントとしての一つの柱として成り立たせることができるのではないかと考え、当時の上司に上申しましたが、見事に却下されました。
今はどこの建設コンサルタントの営業のアイテムにも普通に入るようになっています。
筆者のいた会社では時期尚早だった、ということだったようです。

『運送業』における『災害時のロジスティックス』について述べてきましたが、ここでは加えて『荷主業』としての対応、主に『荷主業』のBCP(事業継続計画)を考えてみたいです。

災害時の『荷主業』の対応

『運送業』と『荷主業』に共通して一番大切なのはお預かりしている『荷』でしょう。
最終のエンドユーザーの手元にお届けするまでのどの時点で災害が襲ってくるかは誰にもわかりません。
今回の台風15・19号でも多くの『荷』が水に浸かり、流されました。
やっと19号も『激甚災害』に指定されましたが、『運送業』と『荷主業』としての私たちはどこまで手厚く保障してもらえるのでしょう。
しかし、信用と信頼はお金では解決されない部分があります。
代替え品があって、保険で充当されるような被害であればまだ救いもありますが、代替え品は無く、しかも日本国内『本日発送・翌日配達』が当たり前になってしまっている現状下で失ってしまった信用と信頼は『運送業』と『荷主業』にとっては計り知れない被害となります。

荷台が開いているトラック

『荷主業』として事前に考えることの出来ること

この災害時の対応は二つに分かれると思います。
まずは台風のように気象情報で事前に大きな予測のつくものは事前に手を打つべきです。
今回の台風19号で配送大手三社が取った行動のようにスーパー台風の威力と進路を予想し勇気をもって早くから休業を告知するべきです。
そして運送業者にルール通りのキャンセル料金を支払ってその旨を連絡するべきです。
よほどの、特殊事情があっても事前に手を打つべきです。
『転ばぬ先の杖』です。

しかし、不幸にも被災してしまった時のために、その後の予測と方策を事前に立てるべきです。
それがBCP(事業継続計画)のひとつです。

BCP(事業継続計画)の実際

自分の身に本当にふりかかるかどうかわからない天災に多額の費用をかけて『BCP』を行うことにためらう事業者さんが多いことと思います。
ローコスト・ロープライスと時短を当たり前のように求められて、しわ寄せは『荷主業』と『運送業』に来ているのではないでしょうか。

どの業界でも『BCP』は当たり前のように扱われ、繁忙な業務時間をさいてその勉強会に行った経営者の方も多いのではないでしょうか。
多くのコンサルタントからの勧誘も受けているのではないでしょうか。
でも全てには多額な費用がかかります。

筆者はそのすべてを行うことは必要ではないと思っています。
賢い事業者にとっては当たり前だと思われる準備が多いのではないでしょうか。
・事前の緊急の資機材、食料、飲料の備蓄
・社員、家族との連絡網
・得意先、関係会社のリスト作成
・燃料の確保  など

地震、スーパー台風が続く昨今の日本の企業でこれらの準備が出来ていないところは無いでしょう。

ただ、これらのなかで心がけねばならないのはシステム化されている情報です。
コンピューターもスマートホンも電気が無ければ動きません、バックアップの方法を考えるのも一手段です。
部分的にはプリントアウトしての保管も有用かも知れません。

筆者が気になったのは『運転者』さんです。
『運転者』はその時一人になり、一人で判断・行動をしなければなりません。
スマートホンだけを命綱とするのはあまりにリスクが大きすぎます。
水没や破損、電池切れがあります。
そんなときのためにいつも必ず携帯して移動する『携行カード』が有用だと思いました。
原始的ですが、紙のカードです。
氏名、本人の個体情報、会社名、連絡先、自宅、家族の携帯、取引先などを書いたカードです。
災害に遭遇した際の手順も書いておいたらいいかもしれません。
スマホに頼りすぎてあることが当たり前になっている私たちはそれが無くなった場合が想定できません。
案外自宅の電話番号すら記憶にない方も多いのではないでしょうか。
これは『運送業』のみならず『荷主業』にとっても有用なカードになると思います。

BCPの書類を作るよりも長い経験で今お持ちの有事の際に行動すべきことを経営者が従業員に繰り返し伝え徹底することの方が大事です。
これが身に付けば有事の際には実際の行動に移ることができるでしょう。
それで社員、家族、取引先は安心してその先に進んでいくことができます。

段ボール

災害時のロジスティクスから未来を考える

台風の巨大化が海水温の上昇に起因していると多くの学者は説いているそうです。
北に向かって冷えて小さくなっていくはずの台風が巨大化していく原因が海水温の上昇だとしたら、これから来る台風のうちのいくつかは必ず今回のようなスーパー台風となるわけです。
個々での防災、台風対策の枠からは外れてしまっていて、国レベルで考えていかなければならない大きな問題であるように思います。
日本中の河川の堤防を強化し、山崩れを起こさせない緑化を日本中の山々に施すのは来年までには出来ないでしょう。
来年も必ずスーパー台風は来るものと思って備えた方が得策のようです。

そして地球温暖化が引き起こすこの大災害のもとが『CO2』だとしたら、我々『物流業』に携わる者すべても真剣に取り組まなければならない問題です。
『ロジスティクス』における生産活動において排出する『CO2』がこの大災害の原因だとしたら、みずから蒔いた種が巨木に成長して自身に向かって倒れてくるのも同然だと思いませんか。そんな未来は何としても回避したいものです。

(筆 : 三河のジョナサン)