物流における自動運転トラックが、日本に導入されることはあるのでしょうか?日本の物流業界は、さまざまな問題を抱えています。世界では自動運転ロボットやAIを搭載したドローンでの配送が予定されていますが、さて日本はこれからどうなるのでしょうか。
今回の記事では、日本の抱える物流の問題についての説明、海外で行われている自動運転についての紹介、そして現在の日本の物流の状況について記載しています。

「人材不足」と「ラストワンマイル」問題を抱える物流

物流業界には、大きな問題があります。その代表ともいえる「人材不足」と「ラストワンマイル」について、まずはご説明を行なっていきます。自動運転トラックを導入することにより、良い影響を与え、問題が解決するかもしれません。

物流業界の人材不足

物流業界では、人材不足が大きな問題のひとつになっています。

インターネットショッピングが広がり、物流での取引量が急激に増加しました。物流業界では、その作業量に対応できる人材の確保が追いついていません。現在の作業スタッフで大量の仕事を回しているため、過酷な労働環境になっている物流会社もあります。
そしてトラック運転手の高齢化問題もあります。全日本トラック協会が2018年に作成した資料によると現在、40〜50代のトラックドライバーが全体のドライバーの約半数を占めています。10年・20年後になると、この層が労働者から抜けていくでしょう。若い世代のトラック運転手の割合は低いため、この業界の未来にも不安を感じさせます。

※参考:総務省「労働力調査」から全日本トラック協会作成(2018)
http://www.jta.or.jp/coho/yuso_genjyo/yuso_genjo2018.pdf

これから先も物流のニーズは高まっていくことが予測されているため、作業に対応できるような仕組み・そして技術を取り入れていくのは必須だと言えるでしょう。

「ラストワンマイル」問題

「ラストワンマイル」の問題もあります。これを解決するために、企業ではさまざまな努力を行なっています。では、「ラストワンマイル」とはいったい何なのでしょうか?

物流業界で「ラストワンマイル」と言うと、納品先へ商品を届ける最後の区間のことを指します。
実際の距離のマイルを表現しているのではなく、例えば配送センターから荷受け人までの受け取りまでに起きる問題のことになります。
運送会社ではこの「ラストワンマイル」について対策を行なっており、代表的なものでいえば、当日・翌日配送サービスなど受け取りの時間を短くすることを実施しています。
しかし、配送サービスを充実することにより、配送員の負担が高まり人件費が高騰するなどの問題も起こっています。

これからお伝えする自動運転・ドローンでこの「ラストワンマイル」が解決するかも知れません。



トラック運転の手元

海外で取り入れられている自動運転

次にご紹介をするのは、海外での自動運転がどのように取り入れられているのか、もしくは取り入れる予定なのかついてです。「米アマゾンのドローン配送予定」「中国での自動運転サービス」について紹介を行なっていきます。

米アマゾンではドローンの配送サービスを実施予定

米アマゾンでは、ドローンの配送サービスを行う計画を立てています。計画では、注文から30分以内に納品先にドローンが商品を届けるように目指しています。自動運転で商品を届けるため、トラックに積んで配送する手間がかからず、スムーズに運ぶことができる見通しがあります。
制限として約24km以内の距離で、そして荷物も2kg以下で配送するといった条件があるため、軽い荷物対象の配送サービスだと言えるでしょう。

中国での自動運転は進んでいる

ちなみに中国だとすでに自動運転が実用化されています。

例えば、Aisimba Technologyの「Little Lion」・京東集団(JD.com)と長沙行深智能科技(Go Further AI)による「超影1000C」など、実際に現場で使用されている配送サービスがあります。
これらは工業団地・住宅地・教育施設・公園などで利用されており、着々と自動運転サービスが進んでいるようです。
例えば「超影1000C」は、信号を認識し、障害物も自動で回避し、データに従い目的地に向かうことができます。

配達スタッフと比べると、大量の自動運転では大量の商品を配送することができるため、配送コストの削減にも期待がされています。


日本の自動運転の展望

最後にご説明をするのは、現在の日本の自動運転の状態についてです。現在の日本の物流では、実際に自動運転は取り入れられているのでしょうか?
「参入している企業」「法整備の問題」「無人運転トラックの実験」などについて紹介していきます。

参入している企業

現在すでに参入している日本の企業をご紹介します。

オプティマインド
オプティマインドは2015年に始まった名古屋大学発のベンチャー企業です。
AI最適配車クラウドサービス「Loogia」は、配送を効率化させるシステム。機械学習を使用し、最適な配送ルートを提案します。効率的に配送を行うことができるサービスを行なっています。

Hakobot
ホリエモンとして有名な堀江貴文氏がアドバイザーとして就任している会社です。2018年の「ホリエモン祭 in 名古屋」にて、自動運転技術を搭載した実証実験用の配送ロボットの公開を行いました。

上記などが、日本が参入している企業になります。
実際に導入まで進んでいる海外と比較すると、日本は遅れているように見受けられます。開発コストの問題で、日本では自動運転が進んでいない傾向もあるようです。

法整備の問題

日本でも物流ロボットの期待が高まっていますが、そもそも現在の法律だと物流ロボットが道路を走行することができません。
それに向けて製材産業法は、官民協議会を立ち上げました。
2019年度内に、道路使用許可の申請に対する取扱いの基準を決めていく予定です。
そのほかの問題についても、調査・実験を進めながら検討しています。

まだまだ法の整備がされていないため、導入するためにはここから変わっていかないといけないでしょう。

無人運転トラックの実験は日本でも進められている

高速道路での無人運転のトラック実験は、進められています。
国土交通省・経済産業省による「トラック隊列走行の後続車無人システムの公道実証」では、高速道路でのトラック隊列走行ができるように実験中です。
これが実現すれば、先頭のトラックのみ運転手が走行し、後続のトラックは無人で走らせることができます。

2020年の商業化に向けて、実際に走らせられるように実験が続けられています。
これが実現されれば人手不足の運送業界にとって、大きな力になるでしょう。


まとめ

今回の記事では、日本の物流の問題、海外で行われている自動運転についての紹介、そして現在の日本の物流の状況について紹介をしました。
「人材不足」と「ラストワンマイル」問題を抱える日本にとって、自動運転は導入することにより良い影響を与えるのではないでしょうか。
法の制度が整ってないため、今すぐの導入ということはできませんが、着実に自動運転トラックの導入に向けて進んでいるようです。

一方忘れてはならないのは、物流の仕事も「人と人とのやりとり」だということです。コストカットや問題解決も大切ですが、物流は心・誠意を込めて配送しているサービスであるため、効率化にとらわれて、受取人やドライバーの気持ちを忘れてはいけないでしょう。

ペンネーム:山中かおり