「人手不足」といえば物流業界のことが頭に浮かぶ人も少なくありません。ではなぜ物流業界は人手が足りていないのでしょうか。
この記事ではこれから、人手不足の理由や、そして、様々な企業で行なっている人手不足の対策などをご紹介していきます。

なぜ物流業界は人手不足なのか

社会的ニーズが高まっている業界の1つとして言われている物流業界。この急成長する業界に対して、人手不足が叫ばれています。では、なぜ物流業界は人手不足なのでしょうか?これからその理由について「市場の成長による宅配便取扱数の増加」「トラックの積載効率の悪さ」「トラックドライバーの高齢化」の点からご説明をしていきます。

市場の成長による宅配便取扱数の増加

人手不足の原因として最初にあげられるのは「市場の成長により、宅配便の取り扱い数が急増した」ことです。
2010年ごろから日本ではEコマース産業が活発化してきました。代表的なサービスをあげると、Amazonや楽天などになります。

その産業の発達に伴い、以前と比べて物流での取引量が莫大に増加しました。これまでは自分で小売店で買い物をしていたのが、インターネットを通じて自宅で買い物ができるようになり、配達のために運送会社が利用される頻度が社会全体で非常に高くなったのです。
国土交通省の調査によると、平成30年の宅配便取扱個数は4,307百万個となっており、10年前の取引個数と比べると約1,000百万個も増えています。

それに伴い倉庫での作業も増え、人手不足が叫ばれています。とくに倉庫の場合だと、倉庫の近隣に建てられがちな大型ショッピングモールに人手が奪われることもあり、作業が増えるだけでなく人が集まらない現状もあります。

ほかにもドライバーが配送に向かうとき、荷受人が不在のこともあり、何度も同じ場所を訪れる必要があるので、効率的に済ませられないと言った問題も発生しています。
各運送会社は、増加した仕事に合わせて送料の値上げや従業員の増員などを行なっていますが、大きな解決にはならず人手不足が続いています。

トラックの積載効率の悪さ

トラックにおける積載効率の悪さも、物流の作業量を増やす原因の一つとしてあげられています。現在の積載量の平均は40%だとも言われています。

トラックの積載効率の悪さについては、トラックに積む荷物の種類によって起こる問題もあります。
例えば、小売・アパレル・ファッション業界では、商品・ブランドごとに段ボール箱のサイズが違うことが多く、トラックに積み込むときに無駄なスペースが空くことも。トラック1台にまだ積み込めるのに、積荷の形が原因で積み込めないケースも起こっています。
物流のニーズが高まっている昨今では、積載効率の向上についても無視できない現実があります。

トラックドライバーの高齢化

ドライバーの高齢化も、大きな問題の一つです。現在のトラック業界は他業種と比べ40〜50台の中年層が活躍する業種です。国土交通省によると、40〜54歳がトラック業界の約45%を占めています。これは、他業種と比べると高齢の労働者が多いといえます。
その一方でトラック業界は若年層の割合が少ないです。労働者は29歳以下の10%よりも少なく、若い人が珍しい業界だと言えるでしょう。

トラック業界は若者から見ると「キツそうな仕事」と言った、ネガティブな印象も強いため、あまり魅力的に見えない側面もあるようです。

街の様子と高速道路

人手不足は長く続く

さきほどの段落でご説明したことを含めると、「人手不足が自然に解消する」ことはむずかしいでしょう。
Eコマース産業が賑わい物流の需要の高まりやトラックドライバーの高齢化など、問題がたくさんあります。
これからの日本全体は、高齢化を迎え、15歳から64歳の労働者が多い層の人口構成の割合は、徐々に減少していきます。予測だと…2045年には50%台まで落ち込むと推測されています。
物流業界では年層からの魅力が乏しくみられがちであり、なおかつ物流センターのある地域には大型の商業施設などもあり、そちらに雇用が奪われている現状もあるとのこと。
これから10~20年もすれば、現在主力として活躍している40代~50代前半の中年層も退職するため、なんらかの対処が必要になるでしょう。

ちなみに、鉄道貨物協会の発表によると、2028年にはドライバーが約27万人不足すると推測されています。特に中型・大型のドライバーの人手不足が起こるとのことです。


業務効率化で人手不足問題解決へと

人手不足を解消するために、努力を行なっている企業も多いです。そこでこれから、効率化のために現在行われていることをご紹介していきます。「共同化に伴う空き重量、容量の削減」「配送物のサイズを最適化させ積載量を増やす」「棚入れや仕分け業務の倉庫側での徹底」」「荷待ち時間の削減」などを記載しています。

共同化に伴う空き重量、容量の削減

業務効率化のために、複数の企業同士で荷物を同じトラックにまとめる共同配送が行われています。
同じ取引先に向かう場合は、荷物をまとめた方が配送物の量を増やすことができます。この取り組みを、大手企業が行うところも近年増えてきました。
メリットとしては、積載率を改善することができるだけでなく、トラックをその分走らせなくて済むためCO2排出量を減らせます。またコスト削減も見込めるようです。

配送物のサイズを最適化させ積載量を増やす

よりトラックに荷物を積み込めるように、積荷の形から見直す動きも出てきています。例えば、通箱を使用している企業だと、トラックに合わせて箱の大きさを変えることも行なっているようです。またバラバラのサイズの箱を使用している場合だと、積み重ねたときに空間にどうしても隙間ができるため、統一する動きもでています。
積み込む配送物の大きさを見直し、積載量を増やすように目指しています。

棚入れや仕分け業務を倉庫側で徹底する

ご説明をした通り、現在ドライバー数は足りていません。
そのうえ、商品の配送の際トラックの運転手が荷卸し・検品を行う場合が非常に多いです。この荷卸し・検品をトラック運転手が負担しなくて済むように取り組みが進んでいます。
倉庫側での荷卸し・検品の作業を徹底することにより、ドライバーが空いた時間を運送に回すことができるでしょう。
倉庫と配送の取り決めが進んできている企業もあるようです。

荷待ち時間の削減

配送時に発生する荷待ち時間を減らすことで、業務効率化を図る企業も少なくないようです。
ちなみに荷待ち時間とは、トラックが集荷先・配送先に到着したときに、荷物の積み込みや検品などを行うまで待つ時間のことを指します。
ケースによっては、長時間待機を余儀なくされることも。

それを解消するために、荷卸し時間をシステムで管理する企業が増えてきました。
トラックがあらかじめ決めた時間帯に集荷先・配送先に訪れることで、よりスムーズに作業ができるようにすることを目指しています。
荷下ろし時間を減らすことで、その分の時間をトラックの配送に当てることができます。

砂時計

まとめ

人手不足が叫ばれる物流業界。物流は社会を支える仕事のため、人手不足を解決するために企業ごとでさまざまな取り組みがされています。これからの物流の人手不足について、どのようにするべきか問われている段階にきているのかもしれません。

ペンネーム:山中かおり